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観覧車の歴史|世界初・日本初の観覧車

観覧車特集観覧車の歴史

世界初・日本初の観覧車は?

東京と大阪で起きていた、「観覧車戦争」。「これが世界一高い観覧車だ」というのがいくつもでてきている。というのも、裏には観覧車を作っている業者の争いがあるからのようだ。遊園地の大手メーカー「サノヤス・ヒシノ明昌」と「泉陽興業」がその業者。
この両社がどのような戦いを繰り広げてきたか歴史を見てみることにしてみました。題して…「観覧車の戦国史」日本史にひっかけながら、観覧車の歴史をひも解いてみました。懐かしいテレビ番組「カノッサの屈辱」をイメージしながら戦国史をお楽しみください。

■序章:

世界初の観覧車もバトルから始まった…

世界初の観覧車観覧車が世界で初めてできたのは、今から100年以上前の1893年のこと。今ですら観覧車の高さのバトルがおこっているが、実は観覧車ができたきっかけそのものも「バトル」がはじまりだったのだ。

世界初の観覧車が誕生したのは、1893年のアメリカ・シカゴ。そして、誕生のきっかけとなった「バトル」というのは、アメリカVSフランスの技術力バトルだったのです。
観覧車登場の4年前、1889年。フランスで「パリ万国博覧会」が開催されました。このときに目玉となったのが、当時世界一高い鉄塔「エッフェル塔」の建設です。当時の高さが312mで、「鉄鋼時代の幕開けの記念碑的存在となるだろう」と言われたようです。
そして1893年はアメリカで「シカゴ万国博覧会」が開催される年。エッフェル塔を超える、鉄鋼の展望室を造れないか…そこでジョージ・フェリスが考え出したのが観覧車だったのです。高さ75m、ゴンドラ数が36、各ゴンドラには40の座席と20人の立ち席があり、1周20分で、全ゴンドラに安全確保のため係員が同乗していたとか。ちなみに。英語で観覧車を「フェリス・ホイール」と言いますが、直訳すれば「フェリスの輪」…つまり、発案者フェリスの名前はここに残っているのです。

■幕開け

古墳(興奮)時代:日本初の観覧車は…?

日本初の観覧車も博覧会からはじまり、成長してきました。1906年(明治39年)3月15日に大阪の天王寺公園で戦捷記念博覧会が開催されました。これは1904年~1905年に勃発した日露戦争において日本が勝利をおさめたのを記念して開催されたイベントです。
この時に日本初の観覧車が設置されました。蒸気機関を使って回転し、14個のゴンドラがついていて5分程度で一周したそうです。生の楽隊演奏もされていたそうで、かなり豪華だったと推測されますね。東京に登場したのは明治40年(1907)、上野で開催された東京勧業博覧会。空中回転車とよばれ、高さは30メートルほどですが、当時の新聞によると顔面蒼白になってめまいを訴えた人もいたというほどで、絶叫マシン的感覚で乗って興奮していた人も少なくなかったのかもしれません。
たぶん、日本に観覧車が広まったのは、昭和30年代の「デパートの屋上・遊園地ブーム」じゃないかと思います。このへんのころのことをよく知らないので、知っている方、是非教えてください!

■1980年代・飛鳥時代

「陽、出づる国の天子」

「世界一高い観覧車は?」というと、横浜コスモワールドにある、あの有名なタイムショックのような観覧車「コスモクロック21」(泉陽興業)を思い出す人が多いだろう。よく考えると、日本に世界一高い観覧車があるというのも驚く話だと思う。次の章で詳しく書くが、コスモクロックができたのは1989年だが、それより前の世界一も、実は日本の観覧車だったのはさらにびっくりだ。
1984年のギネスブックでは、現役の世界一高い観覧車として登録されているのは神戸ポートピアランドの「ジャイアントホイール」。1981年3月に完成したもので、高さは63.5mだった。

この記録を塗り替えたのは、やはり日本。1985年つくば万博で出展された観覧車「テクノコスモス」がそれだ。直径82.5m、最高点は85m。1985年からギネスブックに刻まれたのはこの観覧車となった。また、このつくば万博ではKDDパビリオンでテレコムリングという、斜めに傾いた観覧車も出展。まさに泉陽興業の天下だったと言える。

このように、81年の神戸、85年のつくば、89年の横浜、とまさに世界一を3回も自ら塗り替えていった泉陽興業は「陽、出づる国」と言え、まさに時代は飛鳥時代…といっても「あすか」とは読まず、飛ぶ鳥落とす勢いの時代ということの略なのだ…と言えよう。

■1990年代上期・不安時代

「段の裏の戦い」

前章で話題になった、横浜コスモワールドの観覧車「コスモクロック21」が誕生したのは1998年、横浜博覧会(YES’89)で出展されたもの。当時の直径は100m、台座が7.5mだったため、最高点は107.5mだった。参考までに通天閣の高さが103mなので、それよりも高いということである。
100mというのは、今ですら近くに日本一高いビル「横浜ランドマークタワー」(296m。展望室は273m)があるもの、当時としては驚愕の高さだっただろう。そして、私たちはてっきり「コスモクロック21」が世界一高い、と思い込んでいた…

しかし、実は1992年4月、びわ湖タワーに完成した観覧車「イーゴス108」(サノヤス・ヒシノ明昌)が世界一になっていたのだ。直径100m、台座8mで、その高さは名前の通り108m。たぶんギネス登録はおこなわなかったのだろう。そうなのだ。この時ついにサノヤス・ヒシノ明昌が世界一へと躍り出たのだ。それにしても台座の高さ50センチで世界一が変わるというのも何だかなと思うが…。

そう、この50cm、およそ階段の段差2段の違いの差をめぐった裏の戦い、略して「段の、裏の戦い」と呼んでいるが、ここから観覧車世界一を目指す2社の戦いが繰り広げられていくのである。

■1990年代中期・室町時代

「金閣・銀閣?」

そして、108mの観覧車は5年後、泉陽興業によって再び抜かれることになる。
それが、97年7月大阪・天保山ハーバービレッジに誕生した「天保山大観覧車」だ。直径はまたもや100mで、台座が12.5m。よって高さは112.5m。海遊館やマーケットプレイスなどの大阪のベイエリアでのシンボル的存在となり、人気のデートスポットとなった。ということで、この時点で世界一高い観覧車は「天保山大観覧車」となったのだ。おまけながら、世界一高い観覧車がある場所は「日本一高さが低い山がある場所」なのです。そう、名前は天保山、標高4.5m。海抜でいくと、秋田の大潟富士が海抜0mで「日本一高度が低い山」です。まめ知識でした…

そして、本題に戻ると、だまっちゃいなかったのが(?)「サノヤス・ヒシノ明昌」。ベイエリアなんて遠くではなく、大阪のまさに中心地・梅田に98年11月にオープンした阪急デパート「HEPFIVE」の中に観覧車を作ってしまった!名前は「大観覧車」…そのままやんか!高さは106mということで、天保山よりは低い。また、直径も75mで小さい。おや?ここで算数が得意な人な早くも計算をはじめていることと思うが、ということは、この大観覧車の台座は31mもある?!それもそのはず、なんと「大観覧車」の乗り場はデパートの7階にあるのだ。

さて、大阪ではデートスポットVS「新」デートスポットという「立地条件」での対決となった2社だった。これはまるで、室町時代の北山文化・金閣が作られた後に、東山文化・銀閣を造ったかのような…う、この章は強引な解釈…。そにかく、これは戦国時代への序章にすぎなかった…

 

会社 サノヤス・ヒシノ明昌 泉陽興業
名前 大観覧車 天保山大観覧車
場所 HEP FIVE 天保山ハーバービレッジ
最高点 106m 112.5m
直径 75m 100m
乗車時間 15分
定員 208人 480人
ゴンドラ 4人乗り×52台 8人乗り×60台
料金 700円 700円
オープン 98年11月28日 97年7月12日
デパートの7階が乗り場
なので、最高点が高い
気候、温度計を照明で
表す機能をもってます

 

■1990年代後期・戦国時代:

「一日天下」

大阪で立地条件対決が行われているその頃、横浜コスモワールドの「コスモクロック21」は静かに解体作業が行われていた。97年春のことである。その数ヶ月後には「世界一高い観覧車」という称号を自社内の「天保山大観覧車」に譲り渡せることになった。
ところで、なぜ「コスモクロック21」が解体されたかといえば、横浜市内で行われている新地下鉄の工事のためである。風のうわさによれば、「コスモクロック21」がある場所付近に地下鉄の駅ができるとか。それゆえ、岸を挟んだ対岸に移設することとなったのだ。
そして、横浜でも大阪でも、どちらでも「世界一高いぞ」と宣伝できるように、もともと7.5mだった台座を12.5mにまで高くし、これで「コスモクロック21」「天保山大観覧車」ともに世界一高い112.5mの観覧車となったのだ。

しかし・・・またもや「サノヤス・ヒシノ明昌」が反撃に出た。今回は「立地条件」だけでなく「世界一の高さ」という勝負なのだ。
場所は、泣く子もだまるデートスポット「お台場」。それも新名所となる複合エンターテインメントゾーン「パレットタウン」の中だ。名前はまたもやストレートな「大観覧車」。今度も直径は100mで、台座の高さ勝負ではあるが、2.5m高い15mなので、全体の高さは115mとなった。

しかも2つのオープン日は99年3月18日(木)と99年3月19日(金)。「コスモクロック21」は1日だけ世界一の高さだったが、翌日には「大観覧車」にその座を奪われることとなったのだ。これは、「三日天下」ならぬ、たったの「一日天下」であった。

なお、99年3月23日号の「TOKYO1週間」でも観覧車対決の記事があったが、それによると、両社は次のようなコメントをしている。
パレットタウンとの差は土台の2.5mの差。直径100mの観覧車を造ったのは泉陽興業が先なので、後に直径100mの観覧車がいくつできようと、ギネスに残るのは当社だけ」

「やはり高さは重要。観覧車は展望台の役割も兼ねているから高いほうがいいのは当たり前」

う~ん、結局世界一はパレットタウンの「大観覧車」か?

会社 サノヤス・ヒシノ明昌 泉陽興業
名前 大観覧車 コスモクロック21
場所 パレットタウン(お台場) よこはまコスモワールド
最高点 115m 112.5m
直径 100m 100m
乗車時間 16分 15分
定員 384人 480人
ゴンドラ 6人乗り×64台 8人乗り×60台
オープン 99年3月19日 99年3月18日
この当時の
実際の世界一
当時、
ギネス上では世界一

■2000年代・江戸時代:

「黒船来襲」

この観覧車戦争はまだ江戸(東京周辺)の時代が続きそうである。2000年3月に港北ニュータウンにオープンする阪急デパートにも観覧車が。阪急ということで、大阪の阪急デパート「HEPFIVE」を導入した「サノヤス・ヒシノ明昌」が担当。

なんか、台座の高さが2.5m高いぞ!とか争っているなら、いっそのこと観覧車の直径を大きくしたら?と思うのだが、そういう動きが実際にあるようだ。それも日本ではなく、海外に。

2000年のミレニアムイヤーを記念した「ミレニアムホイール/ロンドンアイ」がイギリス・テムズ川のほとりにオープン。高さは135m!

そして、2001年3月17日、日本に観覧車が登場。場所は、東京ディズニーリゾートの対岸にある葛西臨海公園。ディズニーリゾートを一望できるかもしれないこの観覧車。作ったのは泉陽興業。名前はダイヤと花の大観覧車。高さは117mで世界一にな…ん?117m?ってことはロンドンのロンドンアイに負けてるのでは?テレビのドキュメントで見たところ、実は計画段階では「世界一」でこれでまた「サノヤス・ヒシノ明昌」を抜かした!と思っていたら、いつの間にやら海外で20mも抜かされるものが着工していたという悲しい状況になったということらしい。まさに鎖国をしていたらいつの間にやら世界のほうが発展していてショックを隠しきれないという感じだ。

そして、国内にも黒船襲来のときがやってきた。2001年12月15日、福岡・姪浜のアウトレットモール「マリノアシティ福岡」内に登場したジャイアントホイール。ロンドンアイに次ぐ世界でも第2位の観覧車。最高部120m、直径112mで、直径・台座とも名実ともに日本一となった。しかし、これをつくったのは異国からやってきたインタミンジャパン。エアコンつきでバリアフリー対策までしてあるというすぐれもので、舶来の品の良さに、国内は慌てることとなった…。(すでにこの観覧車はなくなり、ひとまわり小さいもののみ残っているが。。)

会社 泉陽興業 インタミンジャパン
名前 ダイヤと花の大観覧車 ジャイアントホイール
場所 葛西臨海公園 マリノアシティ福岡
最高点 117m 120m
直径 111m 112m
乗車時間 17分 20分
定員 408人 480人
ゴンドラ 6人乗り×68台 8人乗り×60台
オープン 2001年3月17日 2001年12月15日
当時の日本2位
(世界3位)
当時の日本1位
(世界2位)

■20XX年代・:

「世界対戦?」

さらに、アメリカ・ラスベガスで「高さ158m」の観覧車がオープン予定。ゴンドラ数35、16人乗りで、なんと高級感あふれる内装でバーやトイレまで設置され、案内係も乗員するそうだ。乗車時間は約30分。

これ以降にもルクセンブルクの「FAB Freizeit Anlagen Baus.a.r.l」という会社で計画しているのが24人乗りのゴンドラが42台で定員1008人、高さが130mという観覧車。
さらにさらに、ロシアの「FAX Designe Co.」という会社で進めているのは、24人乗りのゴンドラが72台で定員がなんと1728人、直径200mの超爆大観覧車「パノラミックホイール」。なんと1周するのに1時間かかるらしい。東京都庁の展望室が202mなので、それとほぼ同じ高さまで行ける観覧車が誕生することに!!ただし、まだ実現化に向けて検討中らしいが、台座の高さで争っている時代は終わりに近づいていることは確かといえるだろう…。

世界一を目指す、果てしなき観覧車の戦いの歴史は続くことだろう。

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